「生産清流化」は、製造企業における業務革新・組織革新のシナリオです。納期短縮を目標として事業環境の変化に対応できるスピードを獲得します。業務を変えるアプローチは「つなぐ化」です。納期遅れの症状を見極めてポイントとなる業務と前後の業務のつながりを1点集中で改善していきます。
■資材を適時に調達するには
資材調達は生産行為の出発点です。調達作業だけでなく生産作業のモノの流れに大きく影響します。必要な時に必要な部品や材料が揃わないと納期に間に合いません。それだけではなく、生産部門の工数が大幅に増加します。
材料の調達には様々な方法がありますが、1種類の調達方法ですべての資材を適時に調達することはできません。資材によって調達リードタイム・品目数・金額・物量などが異なるからです。こうした資材の調達特性に応じていくつかの調達方法を使い分けることが重要です。
■調達特性マップとはなにか
材料・部品を適切な方法で適時に調達するには、まずそれらの調達特性を知る必要があります。調達特性は、「調達特性マップ」の形に整理すると直感的にわかりやすくなります。
調達特性マップ
調達特性マップ上の材料・部品は大きく4つの領域に分類できます。例えば調達リードタイムが10日以内ならば見込みで調達しなくても間に合うとしましょう。上図の例では左上の領域にある資材Aは調達リードタイムを短縮する必要はありません。しかし購入額が大きいので、共通化によって品目数を減らし、単価の低減を検討する必要があります。
左下の領域にある資材Bと資材Cも調達リードタイムの短縮は必要ありません。ただし品目数が少ないので消費は安定している可能性が高い。長期契約することで単価が下げられないかを探索します。
右上の領域にある資材Dは、調達リードタイムが長く種類が多い独自部品です。リードタイムの短縮が必須です。それには、生産計画情報を共有化して内示と確定発注を使い分けることが有効です。
右下の資材Eと資材Fは種類が少ないので見込みで調達し、在庫を持つ方法も考えられます。しかしながら資材Fは物量が大きいので在庫スペースの点から調達リードタイムを短縮することが望まれます。
■調達特性を調査してマップ化する
調達リードタイム・共通性・金額・物量などの調達特性は、材料・部品の一品別に把握することが理想です。しかし分析が煩雑になるので、グループ別に分析します。通常使っている分類方法を使って、材料・部品をグルーピングします。
そして材料・部品のグループ別に、次の特性値を調査します。
・調達リードタイム:発注から納入までの日数
・品目数:グループ内の品目数
・金額:グループの月間購入金額
・物量:グループの月間総容積または重量
■発注方式の種類
一般に使われる発注方式には次のようなものがあります。
@都度発注方式
調達リードタイムが短いものに適用します。生産ロット毎の資材必要量だけを発注します。都度発注方式は在庫がゼロ化でき、さらに資材所要量計画と発注をコンピュータで自動化にできれば発注に関わる作業工数や管理工数も削減できます。
A定期発注方式
需要が予測できる資材に適用します。週毎や月毎などあらかじめ決められた定周期で生産計画の必要量をまとめて発注します。
B定量発注方式(発注点管理方式)
在庫把握精度が高く消費バラツキの小さい資材に適用します。発注点と発注量をあらかじめ決めておき在庫量が発注点を下回ったら発注します。この方式は、ある程度の在庫量は安全在庫として必要になるが、機械的に発注できれば工数はかかりません。
C発注・納入指示分離方式
発注量をまとめるとコストメリットが大きく、かつある需要が予測できる資材に適用します。まとめて多量に発注し、納入指示を分割しながら出します。この方式は取引先との交渉・契約が重要です。
D現物直接管理方式
現場で在庫管理ができる資材に適用します。現場で二重区画制などを活用して「目で見る管理」を行い、在庫が少なくなってきたら発注します。
■調達特性に応じて発注方式を選択する
調達特性と発注方式の関係を例示すると次図のようになります。この例の中で資材Aと資材Cは調達リードタイムが短いため、都度発注方式としています。資材Bは調達リードタイムが短く、かつ購入金額と物量が比較的少ないため現物直接管理方式をとっています。
調達リードタイムの長い資材Eは、見込み在庫を持つ発注方式としています。ただし物量が中程度のため定量発注方式としています。同じく調達リードタイムの長い資材Fは物量が多いため、見込み在庫量を抑えられる定期発注方式としています。
調達リードタイムが長く、品目数が多い資材Dは、在庫量を押さえるために手間のかかる発注・納入指示分離方式をとっています。このように自社の材料・部品の調達特性マップを見ながら適切な発注方式を選択します。
調達特性マップと発注方式の関係例
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