「生産清流化」は、製造企業における業務革新・組織革新のシナリオです。納期短縮を目標として事業環境の変化に対応できるスピードを獲得します。組織革新を進めるには個人のレベルアップが欠かせません。そのキーワードは「学ぶ化」です。ひとりひとりの行動作法を習慣化することで個人技を向上していきます。
■スキルを上げるステップ
個人技を上げるには、まず「仕事に必要なスキルが何か」について本人と上司が共通の認識を持つことが出発点です。そのうえで次のようなステップを踏みながら上げていくことが必要です。
スキルを上げるステップ
ステップ | 実施事項 |
1 | 「仕事に必要なスキルが何か」について本人と上司が共通の認識を持つ |
2 | 各スキル項目についてレベルを判定する |
3 | スキル向上のための計画を策定する |
4 | 計画の実施状況とレベルアップ状況を把握して必要があれば計画を修正する |
■力量評価項目の詳細度
個人の力量を評価する項目は、数10項目程度が適切です。しかしこの程度の項目数では細部まで表現できないことが多い。機械加工の現場ならば「マシニングセンターを使った加工」「汎用フライスを使った加工」といった程度です。細分化しようとすれば「マシニングセンターを使った加工」は、次のような項目に分解できます。
・加工対象材料の選定
・ツールの選定
・加工条件の設定とプログラミング
・ワークの取り扱いと段取替
・マシニングセンターの運転操作
・加工後の計測
・マシニングセンターの点検と保守
このレベルの項目まで細分化すると、ひとつの職場で、数100項目になってしまい、実務上扱いにくくなります。従って「マシニングセンターを使った加工」という表現にとどめておくのがよいでしょう。
■双方向で評価する
評価項目を「マシニングセンターを使った加工」という粗いレベルにすると、評価者によって判定が変化することがあります。それを防ぐために、力量は複数人で評価するとよいでしょう。上司だけでなく、本人・同僚が評価します。そして差があったときに、その差の要因を話し合います。差の要因を探すことが力量を高める余地を探すことにつながります。
■複数人の評価結果をグラフ化する
力量を複数人で評価した場合、評価点の差を発見することが重要です。一番わかりやすいのはグラフ化してみることです。次図は、上司が評価した平均点と本人が評価した平均点をグラフ化した場合の模式図です。
上司評価と本人評価のグラフ例
このグラフは、ほぼ同じ職位・経験年数にある人5人を並べた場合の模式図です。A氏の場合、上司評価と本人評価がほぼ一致しています。評価項目別に見ても一致していれば問題は少ないでしょう。
B氏の場合、評価の差は少ない。問題は評価点の絶対値が同じ職位の人に比べて低いことです。力量の各項目とも低く、実力不足と言えます。
C氏は、上司の評価が高い。職場のエースと期待されている人によく見られるパターンです。しかし上司の過剰期待につながっている可能性があります。またC氏の意欲が低い場合もあり得ます。
D氏は、本人の評価だけが低いケースです。上司の評価のほうが正当であれば、「自信不足」「謙虚すぎる」「意欲不足(実力を隠してラクをしたい)」などに該当します。
E氏は、本人の評価だけが高い。本人の自信過剰なのか、上司が隠れた実力を見落としているのか、評価項目別に差の要因を抽出していくとよいでしょう。意欲は高い人材なので伸ばせる点を見つけられると育成効果は高くなります。
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