1.納期遅れは生活習慣病である
(1)納期の成績を知っているか
本稿は、慢性的な「納期病」に悩む製造企業に対して、改善の考え方と勘所を紹介するものである。「納期
病」とは、「納期を守れない」「納期が長い」といった症状が慢性的に続いている状態である。現代は、あらゆる製造業種で多品種・少量化・短納期化が進んでいる。短納期の重要性が叫ばれているにもかかわらず、それに対処できていない企業は多い。本稿はそうした企業における改善のヒントを提供する。
本稿は次の5つの章から構成されている。
1.納期遅れは生活習慣病である
2.評価を変えて全員で取り組む
3.地図と区画で見せる
4.納期改善の定石を使う
5.整流から盛隆へ展開する
納期を改善する場合、その根本法則は単純である。つまり「仕事をやれば進む、やらなければ進まない」ということである。非常に当たり前の法則に支配されている。「食べれば太る、食べなければ痩せる」という生活習慣病と同じである。第1章はそれについて解説する。
単純な法則に支配されているにも関わらず改善が進まないのは、人間の心理が大きな障害になっているからである。納期を改善するには関係者が意義を知り目標を設定することが重要である。これには「見える化で行動を変える」ことが有効である。第2章では評価を変えて全員で取り組む要点を紹介する。さらに第3章で、地図と区画という見える化の方法について述べる。
見える化で行動を変えただけでは納期は変わらない。最終的には「しくみ化で業務を変える」ことが必要である。第4章では、しくみ化を進める上で使う納期改善の定石を紹介する。さらに第4章は継続的に改善するための展開方法について述べる。
最初に考えて欲しいのは、「納期の成績を知っているか?」ということである。「納期が問題だ」「改善したい」と思うなら、まず現状の成績を定量的に知ることが出発点となる。だが意外に把握できていない企業が多い。納期遵守率はどの位だろうか。受注〜納品の平均日数はどうだろうか。多品種少量と言っているが、月間の受注件数は何件だろうか。まずこれに答えられるようにすることが必要である。