第1章 デリバリー管理
1.3 デリバリー管理実施上の障害と全社的デリバリー管理
(4)全社的デリバリー管理の目的と適用対象
日本の製造業でデリバリー管理を推進するには様々な障害に直面します。これから、こうした障害を軽減するためのデリバリー管理を推進の標準形を提示します。その標準形を全社的デリバリー管理(TDM:Total Delivery Management)と呼びます。これは5つの活動を5段階のステップで展開するものです。その内容に入る前に、全社的デリバリー管理(TDM)の定義・目的・目標・適用対象を整理しておきましょう。
@全社的デリバリー管理の定義
前述したようにデリバリー管理とは、「材料入手からお客様への商品提供に至るまでのモノ・カネ・情報のフローのタイミングと、それを決定する社内の活動を望ましい姿にする」活動です。全社的デリバリー管理もこの定義に準じます。
A全社的デリバリー管理の目的
全社的デリバリー管理の目的は以下のふたつを同時に達成することです。
・商品の供給タイミングを含め、お客様へ提供する価値を最大化すること
・納期・リードタイム・在庫の削減という観点から生産行為におけるムダを
省くこと
B全社的デリバリー管理の目標
全社的デリバリー管理の目標は、フリーキャッシュフローで設定します。しかしこれを達成するために納期・リードタイム・在庫など業務プロセスのタイミングできまる各種の指標を副目標に置きます。
目標項目として代表的なものを例示します。
・財務評価:フリーキャッシュフロー 物流費用
・納期の達成率:顧客納期達成率 資材納入率
・リードタイム:受注から出荷のリードタイム 製品開発のリードタイム
・在庫:在庫金額、在庫回転率 停滞期間
・現場で使用する面積、距離:工場使用面積 ライン長さ
C全社的デリバリー管理の適用対象
納期・リードタイム・在庫の観点から組織的な改善が必要な、一定規模以上の日本の製造企業または事業部等です。ある規模以上の製造業に対して全社的なデリバリー管理を進める場合、場当たり的に対応すると、なかなか効果が上がりません。経営資源の無駄づかいとなります。常に明確な見通しを持って推進する必要があります。
逆にある規模以下、例えば事業活動や生産活動が1部屋の中に収まるような規模の製造企業では、こうした展開は不要でしょう。現状の姿、望ましい姿を描き、それに向かって組織的に取り組むのは容易です。またこうした見通しの良い企業では、そもそもデリバリー問題は少ないのが普通です。
具体的には、以下のような対象です。
業種 |
製造業 |
加工型業種 |
一般機械 電気機械 輸送用機械 精密機械 |
素材型業種 |
鉄鋼 非鉄金属 窯業・土石製品
化学 パルプ・紙・紙加工品 繊維 |
その他業種 |
金属製品 石油・石炭製品
プラスチック製品 食料品・タバコ
衣服・その他の繊維製品
木材・木製品 家具・装備品
出版・印刷 ゴム・皮革製品 |
企業規模 |
従業員 数10人〜 年間売上 数億円〜 |
組織 |
全社 事業部 工場 |
職種 |
開発 生産 営業 |
職務階層 |
経営トップ 管理者 監督者 一般者 |