第2章 5つのステップ別実施事項
(3)個別改善段階の方針管理:在庫精度を目標にする
個別改善段階の方針管理で重要な点は、職場内のモノの流れを個別業務の底上げと全体デザインの両面から取り組むように仕向けることである。各部門が目標に設定する管理指標は、「在庫精度」が最も有効である。調達部門は部品在庫、生産部門は仕掛在庫、営業部門は製品在庫が対象になろう。
在庫精度とは、在庫の現物と帳簿が一致している率である。これを目標にすると次のような効果が誘導される。まず長期滞留在庫・死蔵在庫の発見が容易になる。現物と帳簿が一致しないことが多いと、実際に死蔵在庫が多くても「帳簿が違っているから」と責任転嫁されやすい。
さらに製品在庫や部品在庫の精度が高いと生産必要量と調達所要量の適切な算出が可能になる。それによって製品や部品の欠品が防止できる。欠品が減ると納期だけでなく作業効率にも効果が現れる。もちろん棚卸作業の手間が削減されるし、原価計算の精度向上によってコスト面の効果も期待できる。
在庫精度の向上は多方面に効果があるが、実際に向上させるには多面的な取り組みが必要である。それによって個別業務の底上げと全体デザインが推進される。
例えば入庫時の記帳ミスを減らすには、作業手順の変更や事務手続きに使う画面帳票の見直しが必要である。出庫時のピッキングにはカウントミスが発生する。それを減らすには、現品のカウント方法や在庫台帳への記帳方法の改善が必要となる。
現品票の添付ミスによって現物と帳簿が一致しない場合もある。これに対しては伝票の形式、発行方法やバーコード等の利用を考えなければならない。
無断出庫にも対策が必要である。不良品発生時に仕掛在庫を出庫する場合、あるいは試作用に部品を出庫する場合など例外的な出庫に問題が発生しやすい。こうした場合の手続きを変更する必要が出てくる。また高額な製品・部品では盗難防止策が必要な場合もある。