第2章 5つのステップ別実施事項
(6)納期遵守段階の創発活動:部門間の課題を知る
「創発」とは複雑系システムの用語である。部分と部分の相互作用、部分と全体の相互作用によって全体の特性が変化することを意味する。スピードの問題は業務間の相互関係が強く目で見えにくい。一種の複雑系なのでデザインアプローチだけでは不十分である。全体を変えるには「創発」が必要なのだ。
「創発活動」は、関係者が現状の情報を「共有化」し価値観や方向性に「共鳴」することである。したがって「創発活動」は組織の幹部や構成メンバーの参加が多いほど効果を発揮する。
納期遵守段階の創発活動として、まず「提言傾聴会」を実施する。提言傾聴会は他部門から自部門の課題を提言してもらう会である。他部門からの提言を素直に聞くために、次のようなルールを設ける。
・他部門への提言(6ヶ月以内に実施可能で具体的・建設的なもの)を事前に書面で提出する
・関係部門が一堂に集まる
・対象部門に対して各部門が順番に提言する
・提言中に反論しない
・対象部門は実施時期・手段を回答する
・毎月実施状況を報告する
納期遵守段階では納期情報に着目して職場内の情報の流れを改善する。各職場がそれぞれの納期を守ることがメインテーマである。しかし個別改善段階が対象とした職場内のモノの流れと違い、目で見えにくい。また個別改善段階が終わっていると、ある部門の問題のように見えても複数部門が協力したほうが効果的なものが増える。
提言傾聴会の提言内容のなかから複数部門に関連するテーマを抽出し、「部門横断チーム活動」で取り組む。このチームは複数の部門から代表者を選出して編成する。例えば生産部門の納期は開発部門の納期が影響するから、2つの部門で部門横断チームを編成する。
提言傾聴会で現状が「共有化」され、部門横断チーム活動を通じて価値観が「共鳴」されるのである。