第1章 清流化を根付かせる5つのステップ
(1)モノと情報のスピードアップが21世紀製造業のパスポート
21世紀は知識情報化社会である。これはITを使うという意味ではない。知識・情報・感情が価値を生み出す社会なのだ。21世紀でもモノづくりは必要である。ただしその差別化要素は「価格」ではなく「価値」にシフトする。どこにでもあるモノを提供する企業は、価格競争に巻き込まれる。モノづくりに感動をプラスできる企業だけが、高い付加価値を維持できる。
いま、自動車業界では性能競争が一段落し見た目のデザイン競争になっている。素材メーカーは、従来にない機能を持つ素材を開発している。日用品や食品メーカーも、消費者の健康やライフスタイルを改善する製品を提案している。
ライバルに先駆けて新たな価値を顧客に提供するには、開発・生産・販売のスピードが重要である。ところが「納期が遅れる」「新製品展開が遅れる」「死蔵品の廃棄」「在庫の資金負担が大きい」といった問題を抱える製造企業はまだ多い。
従来スピードに関する改善の取り組みは個別的だった。「納期管理」「工程管理」「在庫管理」「購買管理」「受注管理」「出荷管理」「物流管理」といった個々の業務に対する取り組みが主体である。だが、個別の取り組みには限界がある。スピードの問題は品質やコストの問題よりも、業務間の相互関係が強く目で見えにくいからである。個別改善の積み上げだけではよくならないのだ。
今後は「取引先からの納期短縮要求」「顧客の独自仕様への対応」「製品のライフサイクル短縮」「技術開発のスピード競争」への対応が迫られる。スピードを改善するには全社的・体系的な取り組みが必要である。
本論は、モノと情報を全社的にスピードアップする「清流化」について進め方を紹介する。「清流化」は次の考え方に基づいている。
・5つのステップでモノと情報の3D化(同期化・同量化・同時化)を推進する
・5つの活動で業務改善と全体デザインを融合する