第1章 清流化を根付かせる5つのステップ
(4)創発活動と評価制度で改善対象と改善方向を共有化する
「清流化」は個別業務の底上げと全体デザインの両面から取り組む。中心となるのが方針管理である。経営トップが方針を表明するには、まず全社の業務の流れを正しく認識する必要がある。ところが企業の規模が大きくなると、受注・設計・調達・製造・配送・納入といった一連の業務は広範囲である。組織的・地理的・時間的な広がりを持っている。各現場を全部知っている経営トップはまずいない。
方針を表明するには経営トップが、いろいろな所を見て、何をやっているのかを正しく認識しないといけない。それなしでは、どういう方針でどこへ向けて走りだすか決められないのである。方針を受けて実行する幹部社員も経営トップと同様に、全体の流れを知らなければならない。
「創発活動」は「清流化」の第4の活動である。全社の業務の流れやそのレベルを意図的に認識し「方針管理」を補強する活動である。他部門の現状を相互に見る、モノや情報の流れを図に描く、部門横断チームで活動するといった内容を含んでいる。
第5の活動は「評価制度」である。これも「方針管理」を補強する活動である。スピードアップに関する数値評価指標を設定し、それを方針の設定や部門の評価に使う。
方針は単に方向を示すだけでは不十分である。いつまでにどんなレベルに到達すべきかを示す必要がある。それには数値による評価指標が必須である。ところがスピードアップに関する評価指標、例えば納期やリードタイムというのはタイミングや時間である。慣れていないと数値化しにくい。評価指標自体がうまくできていない、あるいは実態が把握されていないという企業が多いのだ。
評価制度を変えないまま走りだすと、現場が抵抗することが多い。「今後はこういう所を重視して、こういう評価をする。そして目標はここ。」ということを経営トップが示さないと、現場はついてこない。