第1章 清流化を根付かせる5つのステップ
(5)清流化はトップダウンで推進する
「清流化」は全社活動である。トップダウンで推進することが必要である。方針管理で経営トップが目標を設定する。これもトップダウンのひとつである。しかしこれ以外にも実施すべきことがある。
まず「清流化を事業戦略に組み入れる」ことである。事業戦略とは顧客から見た優位性を作ることである。スピードアップが顧客にもたらす変化は、事業の性格によって異なる。例えば日用品ならば製品在庫の圧縮とそれに伴う製品鮮度の向上が一番の変化であろう。家電製品など消費者用機器ならば、新たな機能・性能を持つ新製品をライバルに先駆けて提供できることであろう。
清流化が事業の優位性にどうつながるかを経営トップが理解し、社内に周知することがトップダウンの第一歩である。そして活動の推進を中期計画や単年度の年次計画に反映することが経営トップの役割である。
体制面でも「トップダウンの体制を作る」ことが必要である。「清流化」の推進には従来とは異なる体制が必要である。通常組織とは別にプロジェクト組織が必要になる場合が多い。その場合にも経営トップがリーダーとなる。また複数部門が連携して取り組む体制も必要である。これには経営トップの指示によって部門横断チームを編成する。
トップダウンで推進するには「事業のキャッシュフローで評価する」という姿勢も重要である。清流化の効果は事業のキャッシュフローに現れる。例えば在庫削減の財務上の効果は資金の金利・保管費用・廃棄だけではない。作ってから売れるまでの期間が短くなるために、製品の安売りが減らせる。コストダウンのための設計変更が、売れた製品に反映される時間が短縮され、設計変更の効果が大きくなる。また在庫に投資していた資金が現金として回収できる。税務上の影響もある。これらの効果を評価して「事業の財務に貢献する」というメッセージを発信することも経営トップの役割である。